「探し物が苦手」は、注意力だけの問題?
〜「見ているのに見つからない」のヒミツ〜
「ちゃんと見て探して!」
お子さんの探し物を手伝っていると、ついこんな声をかけることはありませんか?
「筆箱どこ?」
「目の前にあるじゃん!」
「何回言ったら見つけられるの!」
……なんていうやりとり、家庭でもよくあるのではないでしょうか。
でも実は、「探し物が苦手」ということを、単純に「注意力が足りない」と考えることはできません。
私たちが何かを探す時、目はただキョロキョロ動いているだけではありません。
脳は、たくさんの視覚情報の中から「今、必要なものは何か」を選び、目を動かしながら目的のものを見つけ出しています。
この一連の働きを「視覚探索」といいます。
例えば、こんな場面
机の上にたくさんの文房具が置いてあり、その中から「赤い消しゴム」を探すとします。
目の前には、
鉛筆
ノート
青いペン
定規
白い消しゴム
赤い消しゴム
……
と、たくさんの情報があります。
この時、私たちの脳は「赤い」「消しゴム」という特徴を手がかりにして、必要な情報に注目します。
そして、
見る
↓
情報を選ぶ
↓
目を動かす
↓
見つける
↓
「これだ!」と認識する
という処理を行っています。
つまり、「探す」という行動にも、実はさまざまな視覚機能が関係しています。
「見えている」のに「見つからない」ことがある
不思議なのは、探している物が目の前にあるのに、なかなか見つからないことがあることです。
これは大人でも経験がありますよね。
冷蔵庫の中を探していて、
「ない、ない……」
と思っていたら、実は目の前にあった。
これは、物理的には「見えていた」のに、脳が「探しているもの」として認識できていなかった、と考えることができます。
視界に入っていることと、必要な情報を見つけて認識することは、同じではありません。
「視覚探索」にはいろいろな力が関係しています
探し物をするときには、いくつかの視覚的な働きが協力しています。
① 目を目的の場所へ動かす力
広い範囲を探すためには、視線を適切な場所へ移動させる必要があります。
視線の移動がスムーズでないと、同じ場所ばかり見てしまったり、見落としが起こったりすることがあります。
② 必要な情報に注目する力
たくさんの物の中から、「赤い消しゴム」だけに注目する必要があります。
周囲の情報に注意がそれやすかったり、必要な情報を選び出すことに時間がかかったりすると、探すことが難しくなる場合があります。
③ 見たものを整理する力
物の位置や向き、大きさ、形などを捉えながら、「どこを探したのか」「どこがまだ見られていないのか」を整理する必要があります。
④ 見た情報と記憶を結びつける力
「赤い消しゴム」という言葉から、実際の形や色を思い浮かべ、目の前にあるものと照らし合わせることも必要です。
このように、「探す」という一見単純な行動の中にも、複数の視覚的な処理が関わっています。
学校生活でも「探す力」は大活躍
視覚探索は、日常生活だけでなく学校生活でも頻繁に使われています。
例えば、
・教科書の中から指定されたページを探す
・黒板の中から必要な情報を見つける
・プリントから答えを書く場所を探す
・ロッカーから必要な物を見つける
・文章の中から特定の文字を探す
・図や表の中から必要な情報を見つける
などです。
「探し物が苦手」という一つの行動の背景にも、さまざまな視覚的な力が関係している可能性があります。
だから「もっとよく見て!」だけではなく
もちろん、探し物が苦手な理由がすべて視覚機能にあるわけではありません。
注意、記憶、経験、環境、疲れなど、さまざまな要因が関係します。
だからこそ、
「集中していない」
「ちゃんと見ていない」
とすぐに決めつけるのではなく、
「この子は、どこでつまずいているのかな?」
と考えてみることが大切です。
例えば、探す範囲を小さくしてあげたり、「赤いものを探してみよう」と手がかりを与えたりすることで、見つけやすくなることもあります。
ビジョントレーニングでは「見る」を細かく考えます
ビジョントレーニングでは、「見る」という行動を一つのまとまりとして考えるのではなく、
目を動かす
→ 情報を取り込む
→ 必要なものに注意を向ける
→ 情報を整理する
→ 認識する
→ 行動する
というように、さまざまな過程に分けて考えます。
「見えているはずなのに、なぜできないんだろう?」
そんな時には、「見る」という行動の中に、どんな力が必要なのかを考えてみると、新しい発見があるかもしれません。
「見つける」ことも、立派な見る力
私たちは、「見る」というと、視力や視界のことをイメージしがちです。
でも実際には、
見つけること
選ぶこと
追うこと
比べること
覚えること
見た情報を使って動くこと
も、私たちの「見る」に含まれています。
次にお子さんが「ない!見つからない!」と言った時。
すぐに「目の前にあるよ!」と言う前に、
「どうやって探してるのかな?」
と、少しだけ観察してみてください。
もしかすると、そこにはその子の「見る力」の特徴が隠れているかもしれません。
それでは、また次回!